映画「陸軍登戸研究所」
昨年夏に公開されたドキュメンタリー映画「陸軍登戸研究所」。
この映画は元々日本映画学校(現・日本映画大学)の講師だったこの作品の楠山監督が授業のなかの研究題材として、生徒たちと取り組んだところからはじまる。
半年で終わる研究だったが思ったよりも大きなテーマであったこと、謎が多かったこと。。まだまだ追求しつくせないと、そのまま学生たちとともに取材を続け、一緒にやってきた学生が卒業しても、監督は取材を継続し、6年以上の歳月をかけて完成させた。
戦前、極秘に進められていた防諜、謀略、秘密兵器の開発の拠点だった陸軍登戸研究所は、敗戦を迎え「証拠湮滅」の命令が下されて歴史から消えました。しかし、今日、当時の関係者が、そこで何が行われ作られていたかをようやく語り始め、殺人光線、生体実験への道、毒物・爆薬の研究、風船爆弾、生物・化学兵器、ニセ札製造と多岐にわたる研究の実態が明らかになりました。その成果は、陸軍中野学校を通じて果たされたものも多くありました。それぞれに携わった研究員、作業員、風船爆弾の製造の一翼を担わされた当時の女学生たち、陸軍中野学校OB、その他今聞いておかなければ抹消されてしまう歴史を、勇気ある証言者たちがカメラの前に立ち、語った映像を6年以上の歳月をかけて追い続けた渾身のドキュメンタリーがこの「陸軍登戸研究所」です。
映画「陸軍登戸研究所」HPより
昨夏は宮崎駿監督の「風立ちぬ」と同時期の上映となって戦争映画として比較がよくされていた。「これはもうひとつの風立ちぬだ!」などと言われたりしてました。
科学者の情熱が生み出した狂気の発明の数々! 兵器開発の封印された黒歴史『陸軍登戸研究所』(1/3) - 日刊サイゾー
映画『陸軍登戸研究所』 - シネマトゥデイ
新聞やメディアでも沢山取り上げられ、BS11「本格報道 INsideOUT」では「この夏上映 シリーズ映画で戦争を考える~陸軍登戸研究所 いま語られる国策研究の真実~」と題し監督が生出演するなど話題となった。
最初公開した渋谷ユーロスペースでは3時間という長編ドキュメンタリーにもかかわらず異例のヒットとなり、連日満席に近い状態、土日には立ち見もでるほどでした。
のち全国各地でも上映、東京でも何度かアンコール上映がかかっています。
(3月にはポレポレ東中野でもやっていました)
『陸軍登戸研究所』予告編 - YouTube
この映画を制作し監督をした楠山忠之。
闇に消された証言を拾い集め、事実を浮き彫りにした。
6年以上という歳月がかかったというのだから、脱帽というべき執念。
その功労を讃えられてか、今年の第33回藤本賞にて奨励賞を受賞している。
また最近になってこの映画での真実や取材裏話などが綴られた本も出版された。
私は映画も観たし本も読んだが
映画を見た方もそうでない方にもお勧めしたいと思った。
リズムとテンポがよく、長い映画を綺麗にまとめている。
また、映画では監督個人の考えなどは述べておらず、ただ淡々と事実を紡いで繋いでいくようになっているが、本では監督から見た「陸軍登戸研究所」とは何だったのか、あの戦争とは何か。。という思考がみえてくる。
楠山監督は1939年生まれ。まさに第二次世界大戦がはじまった、その年に生まれた監督。
戦争というものは自分の中に流れる大きなテーマであり、今までもそうだったと思われる。
かつて戦場ジャーナリストとしてベトナム戦争を追いかけ、60歳過ぎてからもアフガニスタンに行くなど、現場で生きた取材をしてきた監督ならではの、ドキュメンタリーである。
6月末にはこの映画「陸軍登戸研究所」の完全版がDVDとなって発売予定。
完全版とは、最初にこの映画ができたときはなんと4時間だった。
劇場公開にいたって3時間に編集しなおしたそうだが、DVDではその4時間版が見れる。
この謎の研究所について知りたい方は必見です。