麗しき宴

美も知も酔も、一生

今村昌平監督作品「豚と軍艦」

今村昌平監督 、1961年の作品「豚と軍艦」をみた。
この監督作品をみたのは「楢山節孝」「神々の深き欲望」「にっぽん昆虫記」に続いて4作品目。今村昌平の映画ってホントに生々しいというイメージがある。どの作品も濃厚な人間のドロドロとしたものを浮き上がらせ、泥臭いままにそれを映像に叩きつけてくるんですよね。あんまり女子向けではないよな~。私は図太くてそういう描写にも慣れてるから大丈夫ですが、ふつ~の女子だと見てるうちに頭痛くなっちゃうかもです。

そんな今村作品の中でもこの作品はユーモアあり青春の爽やかさもありで、割と万人受けしそうな映画だと思います。

 今村昌平監督、長門裕之、吉村実子主演。日活製作・配給。白黒 / 日活スコープ。

基地の町・横須賀に米軍の残飯を流用した養豚でひと儲けをたくらむやくざ組織があった。豚の飼育係を任され一時出世の夢を見たものの、内輪揉めに巻き込まれて自滅していくチンピラ男と、その恋人で、男たちに蹂躙されながらも自分の足で歩んでいく女。二人の生きざまを通して、戦後日本の現実を寓意的に描く。

 「豚と軍艦」予告篇

Hogs and Warships trailer - YouTube

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戦後からまだ10ん年しか経っていない時代がどんな時代だったのかを、リアルに見ることができることが非常に興味深い。 日本は全体としてまだまだかなりな貧乏であり、どんな暮らしが標準的だったのかがうかがい知れる。混沌とした社会の中で主役の若いふたりがどんな未来を描いていて日々を生きていたのか。貧しさからの脱却。アメリカへの憧れ。あの時代の明白な状況は、今よりも前を見て歩いて行くのに生きやすい世の中だったようにも思える。だから、若い二人の瞳はいつも眩しいほどにギラギラしている。

スマホいじりイヤホンで外からの音を遮断し俯き歩く今の若い子たちに、そのギラギラした瞳はないものね。

あとはとにかく驚くのは病院の中でも煙草みんなガンガン吸ってたりする。お見舞いにきた人は病室内の重症患者の前でパカパカ吸うし、医者も病室で吸ってる。それが驚くやら面白いやら。昔の常識は今の非常識っていうのがね。そういうのはこの映画に限らず昔の映画観ていて思うことですが。

またこの映画、脇を固める役者さんたちが豪華なのでそういう点でも見てて飽きない。
丹波哲郎南田洋子東野英治郎西村晃加藤武小沢昭一、三島雅夫、大坂志郎、山内明、佐藤英夫、中原早苗菅井きん、武智豊子、殿山泰司奈良岡朋子、初井言栄。

丹波哲郎がウマい。笑っちゃうよ。それにとにかく顔がカッコイイ!最近のイケメンと言われるカッコイイ俳優さんが足元に及ばない位、超二枚目。それが芝居もいいんだからやはり昔の俳優さんって凄いです。南田洋子さんは大好きな女優さんのひとりだけど、これまたカッコイイんですよね。あの映画の頃はおいくつだったのでしょうか。貫禄もあって、素晴らしいです。

どの役者さんもみなさんお若くて驚くけど、ホント、味わいのある芝居しててよいなぁって思う。のちの水戸黄門様がおふたりとも出演してるところとか、なんか、見ただけで得した気分になります(笑)
チョイ役の中国人で殿山さんが出て、あれ?この人、そういえば里見八犬伝にも出てたっけ。。と、急に思い出して。登場シーンは少ないのに記憶にちゃんと残ってる役者っていうのは凄いなぁと思ってしまう。

そしてタイトルの通り、豚も登場するのですが、これがまた凄い。ラストの方で豚がひしめきあった数で登場するシーンは圧巻。

しかしスタッフは大変だったろうなと思います。あれだけの豚を撮影で使う準備やらなにやら。そんなことを思っていたら、その当時の撮影での苦労を話してる動画発見。

豚と軍艦Part1 - YouTube

大笑いしながら昔話をするみなさん。
みんなおじーさんだけど。なんか、かっこいい(笑)

今村昌平作品にはたびたび生き物たちが登場する。

豚はほかにも『神々の深き欲望』で重要なシーンで出てくる。
ただ造作もない、食べるだけ。子孫を残すだけ。

そんな生き物・豚と、煩悩だらけの人間とを対比させてるかのよう。

豚だけでなく、ねずみやらトカゲやらカラスやら。。そういう生き物が好きみたいで、やたら出てくる気がする。それを登場させるのはいいんだけど、それを準備するスタッフは本当にいつも大変だったみたいで、その苦労話やら何やらを書いてる今村昌平についてのHPがあって、今村作品が好きなひとには面白く読めると思うのでおススメ。

今村昌平ワールド(作品研究資料、というところが面白いです)

 マーティン・スコセッシはこの作品を学生時代にみて非常に衝撃を受けたらしい。だとしたら本当に影響受けたんでしょうね。スコセッシ監督の作品にスライドできる雰囲気が「豚と軍艦」にはあるように思いました。


もう1本今村作品を続けて見ましたので次回はその感想を。